訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
「どう、落ち着いた?」

登生を𠮟りつけたところに淳之介さんが帰ってきて、「少し頭を冷やしておいで」と寝室に入れられた。
それからしばらく登生の泣き声が聞こえていたけれど、そのうち聞こえなくなった。
薄明かりの寝室のベットに腰かけ、自己嫌悪にどっぷり。
そのうち涙が流れてきて、大泣きしてしまった。

「目が真っ赤だよ」

うん、知ってる。
自分の感情だけで登生にあたってしまって、人として最低だったと後悔の涙。

「はい、ホットミルク。登生にも飲ませたから、璃子も飲んで」
「うん」

ホットミルクは登生が寝る前のお約束。
いつもは私が用意するのに。

「登生、璃子ちゃんにごめんなさいって」
「私こそ・・・ごめんなさい」
「うん」

私が座るベットの横に並んだ淳之介さんが、そっと肩に手を回した。

「璃子は頑張りすぎなんだよ」
「そんなこと」
ないとは言わない。

でも、頑張らないとどうしようもない時がある。

「なんのために俺がいると思っているの?」
「それは・・・」

淳之介さんは、ただの同居人。
随分甘えてしまっているけれど、いつかはいなくなる人。
これ以上頼ってはいけないと、いつも思っている。

「登生には『食事は台所で食べなさい』って言っておいた」
「ありがとう」
「でも、今回は登生ばかりが悪いわけではないと思うから、『璃子のことはボスが叱っておくよ』って言ったんだ」
「そう」
「そうしたら登生、『璃子ちゃんを怒ったらかわいそうだから、やめて』って、泣かれた」
「そんな・・・」

泣き止んだはずなのに、また目の前の景色が揺れ始めた。
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