どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「まずは、逃げずにちゃんと話しなさい。自分をもっと大事にしないと」
「そうそう、小久保さんは吉岡さんと社長のモヤモヤを解決したり人のためには頑張るのに、もっと自分のことも優先していいよ」
吉岡先輩と佐竹さんは顔を見合わせて、うんうんと頷いていた。
「わがまま言うのって難しいですよね」
私がポツリとそうこぼすと
「それは、まだ遠慮してるからだよ!!」
と吉岡先輩に強く指摘された。
その通りかもしれない、たぶん私はまだ遠慮している。
「それってさ、もし社長が佐竹みたいなフツーの社員だったらどう?」
しばらく考え込む。
「うん、やっぱり違うと思う」
「だよね。でも、肩書は社長でも、一人の男と一人の女が付き合ってるってことに変わりはないんだよ。仕事が忙しくて会えないのは我慢するとしても、会いたいよ~って泣いてもいいし、自分の気持ちはちゃんと言わなきゃダメ!我慢してるってこと言わなきゃ」
吉岡先輩の言う通りだ。
私、我慢してるってこと伝えていない。
「このままだと、小久保さんは寛大な人なんだな~結構ほっといても怒らないんだなって思われちゃうよ!」
佐竹さんはそう言って、吉岡先輩の肩を抱いて続けた。
「この人みたいに、あるがままを見せないと!」
吉岡先輩は、私だって我慢してますよ~と舌を出した。
私は圭史さんにとても愛されているし、愛を示してもらっている。
それなのに、心の中にある不安は全然消えなくて、私でいいのかな?釣り合わないんじゃないか、と考えてしまう。
負のスパイラル……。
「社長が、小久保を選んだの!わかる?抽選であんたが当たったわけじゃない。社長が自分で、選んで好きになったんだよ。どっかの令嬢でもなく、普通のあんたを選んだの」
「そうっすよ。親から反対されるかもしれない相手をわざわざ好きになったのは社長なんだから、もっと強く出てもいいよ、小久保さん」
元気になる言葉をたくさんくれる二人。
私は、牛タンを口に運び、小さく頷いた。
「はい、そうですよね。もっと自信持たないと」
「そうそう、苦労する相手を選んだのはあんたなんだから頑張りなさい!くらいの気持ちでいなきゃ、社長と付き合うの疲れちゃうよ!」
吉岡先輩は、私達がいつでも相手してあげるから、と言ってくれた。
「あり……がとう……ございます」
牛タンを味わいながら、目に涙が浮かぶ。
私はとんでもなく幸せ者だ。
こんな素敵な先輩達いるなんて、ね。