どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「あれ?小久保、まだ残業?」
7時になり、みんなが帰り出す。
残業代が一日2時間まで出るから女子社員も7時まで残っていることが多い。
私の場合早く帰りたくても、5時に帰社する営業さんの手伝いで、ほぼ毎日こんな時間。
と、言っても今日は特別。
「今日は、待ち合わせがあるんで、残った仕事やっとこうかと思って」
「ふふ、その顔はデートだね。頑張ってヤっといで」
「ちょっと~!何言ってんですか」
吉岡先輩とのこういう会話、楽しくて大好き。
「ま、私も今日は決着つけてくるから」
「え?デートですか?」
吉岡先輩は、親指を立ててかっこよく去って行った。
私も今日、しっかりと伝えたい。
圭史さんの気持ち、ちゃんと受け止めたこと。
これからはもっと圭史さんを信じるねってこと。
頼まれた注文書などを作っているうちに、8時になった。
「お疲れ様です~」
上司に声をかけ、トイレで化粧直し。
あの禁断の22階に遂に……
緊張は抑えられなくて、心臓がバクバクしていた。
エレベーターに乗り、22階を押す。
自分が降りる為に押すのは初めてだった。
22階に着くと【応接間】【会議室】と通り、【社長室】が見える。
――トントン
ノックをすると、扉の奥から足音が聞こえる。
初めて降り立った22階は、とても静かだった。
「ようこそ、社長室へ」
ベストを着た圭史さんは、社長の貫禄たっぷりに扉を開けた。
「入るの緊張する」
「そう?何もないよ。社長室って言っても、ほとんどここにいないしな」
「広くて、綺麗~!」
「無駄に広くて落ち着かない。おっと、いちおう鍵、閉めとくか」
圭史さんは、ニヤっと笑って、鍵を閉めた。