記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
1人になった途端に、涙は溢れて止まらなくなる。どうしようもなく、花灯に会いたくて、寂しくて、息苦しくなる。

「……どうして、私も連れて、逝ってくれなかったの……」

来未は、震える指先で便箋に触れた。

これを読めば、全部が終わりを告げる気がした。

それでも、花火からの最初で最後の手紙を読まなければならない。この手紙に、どうして自分を殺さなかったのか、花灯の返事が書いてある、そんな気がしたから。

来未は、几帳面に二つ折りにされた便箋をゆっくりと開いた。


『来未へ 
    泣くな。幸せに。』


初めて花灯の直筆の文字を見た。整った、少し大きめの文字で、そう一言だけ書いてあった。

(花灯らしい……余計な事は喋らない人だった……)

来未は、とめどなく溢れる涙で濡れた線香花火を両手にそっと包み込んだ。


ーーーー『幸せの記憶だけを見せてくれる花火だよ』

いつかの花灯の言葉が、かすみ草の香りと共に窓辺から、風に乗って聞こえてくる。


「花灯……ありがとう……」


これから、僅かに手元に遺された幸せの記憶だけを抱いて、前だけを見つめて、ただ歩いていく。

辛い過去を振り返る日もあるだろう。孤独に押し潰される夜も過ごすだろう。


それでも、生きることを諦めない。

いつか、心から笑える日を信じているから。

そして、夏が来るたびに思い出す。
夏空を見上げる度に、祈り、願い続ける。


ーーーーまた貴方と会える日を、花火の|灯(あかり)を見つめながら……。

< 152 / 152 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:11

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

恋のエンドロールでキスをして【小説版】
遊野煌/著

総文字数/73,472

恋愛(純愛)122ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
脚本家を目指す、有瀬花(19)はエブリ芸術大学のメディア映像芸術コースに入学を果たす。そこで花は映画サークルの監督兼カメラマンをしている夏宮怜(20)と再会する。 二人は中学生の時、恋人同士だったが突然、怜から別れを告げられている。 花は脚本担当として怜のサークルに入部することになり、映画作りに情熱を注ぐ彼のそばにいるうちに再び惹かれていく。 『──ねぇ、エンドロールでキスをして』 エンドロールで恋人とキスをすると、その恋が永遠になるというおまじないを花はずっと信じていて……。 ※コンテスト用に改稿しております。 ※プロットはありますが、諸事情により第一部(第七幕)で一旦完結とします。ご了承くださいませ。
クズなキミからの不適切な溺愛
遊野煌/著

総文字数/125,482

恋愛(オフィスラブ)218ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大手飲料メーカーのツリードリンクHDの企画営業部に勤める新名光莉(にいな ひかり)27歳は同期の犬井和馬(いぬい かずま)と交際中。 ある日、光莉は犬井が後輩の美蘭と浮気しており、自分のことを『俺専用の仲居さん』と呼んでいるのを聞いてしまう。公園で酔い潰れた光莉は朝起きたら見覚えのないベッドの上にいた。 光莉の隣で寝ていたのは吉良恩志(きら おんじ)。シゴデキで芸能人顔負けの容姿とその名前から『キラ王子』と呼ばれている後輩だが、なんせ女癖が最悪で光莉は彼をクズだと密かに軽蔑していた。 「あの吉良、くん? だよね?」 「一晩一緒に過ごしたくせに誰に見えてるんすか?」 「……待って、いや、ちょっと考えさせて」 恋に仕事に一生懸命のアラサーヒロインと 女にだらしないクズ(?)ヒーローの隠れた溺愛の行方は──?! ※フリー素材です。 執筆期間 2025.8.23〜9.23 ※お礼特典『恩志くんは可愛いトイプーじゃいられない』追加しました。2025.9.30 ※お礼特典②『恩志くんのお手伝い大作戦』 追加しました。2025.10.4 ※お礼特典③『今夜もお預けなんて聞いてない』2025.10.11 特典は今後も随時追加していく予定です。
30秒で謎解き?!
遊野煌/著

総文字数/1,009

ミステリー・サスペンス5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
30秒で読めるお話をイロイロ考えてみました。 良かったら読んでみてください! 思いついたら、随時追加していきます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop