記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
長袖シャツの下は、いつも黒のスラックスだ。ただ、長い髪の毛だけは、夏場だけ、一つ括りにしている為、僅かにうなじが見える。

「あ、首元!」

ワザと千夏は、相川の首元を指差した。千夏に背を向けていた、相川の身体が僅かに跳ねた。

ゆっくりと、相川の肩に手を置いた瞬間、飛び上がるようにして、相川が席を立ち上がった。

「な、何ですか!触らないでください!本気で課長にいいますから!」

千夏を睨み上げると、相川は、嫌悪感を露わにして目元をきゅっと細めた。

「悪い、コレついてたから」

相川の瞳が、僅かに見開かれるのが分かった。

「何?ただの髪の毛。自分の髪の毛が、そんなに珍しい?」

「いえ、別に……でも次回からは、触らないでください」

真顔の相川に、違和感を覚える。

「了解。僕もセクハラで辞職願は出したく無いからね。会議14時だよ」

「午後からの会議には、間に合うように行きますからっ」

ヒラヒラと掌を振ると、千夏はお会計を済ませて店の外へ出た。

千夏のスラックスのポケットには、捨てるフリをして、忍ばせた相川の髪の毛と、復元されたばかりの波多野文香のスマホが入っていた。
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