大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 

 飲み終えた咲子は、胸に手をやり、そのまま止まっていた。

 いつ死ぬんだろう?

 今のところ、苦しくないようだが……。

 外では静かに虫が鳴いている。

「咲子」

「は、はいっ」
と咲子は顔を上げた。

「明日、上官にお礼を言うのに、感想を述べねばならない。
 俺も飲むから、今度はお前が点ててくれるか?」

「えっ?
 死ぬ気ですかっ?」

 実はこれ、心中っ!?
と思った咲子の頭の中では、行正が軍の金を使い込んでいた。

 口に出して言えば、
「いや、俺はそんなことできる部署にはいない……」
と言われていただろうが、出さなかったので、ただ、

「……抹茶の点て方が雑だからって死なないだろうよ」
と呟かれる。
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