大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「止めてくれ」
と行正が言った。

 車はあの祠の通りに差し掛かっていた。

 まだまだ走る車は少ないので、いきなり止めることもたやすい。

「通りかかったら拝むんじゃないのか?」
と行正が言ってくる。

「……ありがとうございます」

 なんだかんだでこの人、よく私の言ったこと、覚えててくれるよな、と思い、感謝を込めて微笑みかけたが。

 行正は厳しい顔つきのまま、視線をそらしてしまった。

 ……でも、なんか、こういう対応にも慣れてきたな、と思い、咲子は、ふふふ、と笑う。

 二人、車を降りて、祠に手を合わせた。

 目を開けた行正が問うてくる。

「なにを祈ってるんだ?」
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