大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「こんな時間なら、俺ひとりでお前を見つめられていられるじゃないか」

 事実を述べただけだった。

 他意はなかった。

 だが、咲子は赤くなった。

 しかし、行正はそのことにも気づかなかった。

 まだまだ心の旅券に、人相の特徴を書き足していたからだ。

 だが、ふと、気になり、訊いてみる。

「お前だったら、旅券に俺の特徴、なんて書く?」

 えっ? と咲子は赤くなり、

「いっ、言えませんっ」
と両手を振った。

 ……どんなこと考えてるんだろうな。

 なにもかもが恐ろしい感じです、とか?

 そう行正は思っていたが。

 咲子は、
「なにもかもがお美しく完璧ですっ」
と思っていた。

 所詮、似た者夫婦だった。
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