妖怪ホテルと加齢臭問題・その後の小話・オトナの現実と何とかの糸
「天音ちゃんのパスポート、
取らないとね。」

久遠が車のキィーを押したのか、
あの外車のハザードライトが、
ついて消え、ロック解除の合図をした。

「結婚の手続きは、大使館にもいかないと」
久遠はそう言って、
もう一度、再確認するように、
ぎゅっと、天音の手を握りしめた。

天音は、これから押し寄せる、
多分、相当に大変であろう現実を考えた。
が、
久遠のメチャクチャに、うれしそうな顔を見ると、
このわんこの飼い主に、なるしかないだろう、覚悟を決めた。

わんこは、するりと天音の肩に、
腕を回してきた。
「天音ちゃんと、キスしたいんだけど」
久遠が、甘えるように言うと、

「キスは来週って、言いましたよね」
天音はきっぱり言い、
指で×印を作り、周囲を見回した。

いくらなんでも・・
この場所は、まずいでしょ・・・

「だからさぁ、俺からは来週だけど、
天音ちゃんからしてくれるなら、
今日でもいいと、思うけど?」
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