恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
天井が高く、水槽の周りに大きなライトがいくつも置かれている。
 長靴とライフジャケットをつけると飼育員さんの説明を受け、ジンベエザメのいる水槽へ――。
 水槽の深さは八メートル。
 三メートルはありそうな長い柄のついたひしゃくでエサをやるのだが、さすがに歩ひとりでは無理なので飼育員さんが手伝ってくれた。
 ジンベエザメがパクッと大きな口を開けてプランクトンを食べる様子は圧巻。
「うわっ、すごい」
 大きく目を見開いて驚く私の横で一条くんが一眼レフカメラで歩を連写している。
「美鈴もやってみれば?」
「私は遠慮しておく。びっくりして水槽に落ちそう」
「そういえば美鈴、あれ以来泳いでない?」
 あれ以来というのは多分、高校の臨海学校のことだろう。
 遠泳で足がつって溺れたところを彼が助けてくれたのだ。
 あの時は本当に死ぬかと思った。
 海水を飲み込んで、身体が沈んで……。
 一条くんが助けてくれなかったら、どうなっていたか。
 
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