恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 だが、俺は離さなかった。
「嫌だって言ったら?」
 美鈴を試すような質問を投げて、彼女の反応を見る。
 彼女と同居してわかったことがある。
 最近、家に帰るのが楽しい。
 美鈴がいて、歩がいて……家の中が賑やかになって……。
 血は繋がっていないけど、お互い顔を見ながら食事をして、テレビを見て笑う。
 これが家族というものなんじゃないだろうか。
 普通の家庭を知らないが、今の生活が気に入っている。
 歩が就寝すれば、美鈴とふたりだけになり、家族から恋人のような時間に変わる。
 風邪が治ってから美鈴は毎晩のように『リビングのソファで寝る』とごねるが、それでは  志乃さんに恋人ではないとバレると言い聞かせて、一緒に俺と寝ている。
 彼女は最初はかなり緊張した様子で『一緒じゃ眠れない』と文句を言うのに、二十分後には熟睡している。
 本当に俺を男として意識しているのか疑問に思うのだが、それだけ疲れているのかもしれない。
 
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