恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
杉本くんの葬儀で絢斗は気丈に振る舞い、友達を代表して弔辞を読んだ。
 絢斗は杉本くんにお見舞いにも何度も行ったらしい。
 九年経っても友人の死は辛いだろう。
 だから、今朝元気がなかったのか。
「絢斗……」
 なんて言葉をかけていいのかわからなかった。
「俺の帰りを待ってたの?」
 私の頬に手を当てて尋ねる彼の目を見て頷いた。
「うん」
 いつもだったら否定していたかもしれない。
 でも、もう嘘をつきたくなかった。
「シャワー浴びて酔いを覚ましてくる。眠かったら寝てていいよ」
 そう言って寝室へ行く彼の後ろ姿を見つめる。
 その後ろ姿がとても悲しそうで見ていて胸が痛かった。
 リビングに戻り、つけっ放しになっていたテレビを止めて、ソファに座って高校時代の絢斗と杉本くんのことを考える。
 絢斗は物静かでクールだったけれど、杉本くんはいつも明るくて笑顔が絶えない人だった。
 少し女たらしのところはあったけどクラスの人気者で、絢斗が月とすれば、杉本くんは太陽。
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