恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 まずは、逃げずに彼の目を見て話すことから始めよう。
 まだ告白する勇気はないけど、少しずつでも彼と向き合いたい。
 そろそろ寝間着に着替えようと思ったら、ガチャッと玄関のドアが開く音がした。
 絢斗が帰ってきた!
 まだ顔も見ていないのになんだか緊張する。
 あっ、でもまだ着替えていない。
 バスローブ姿だと胸の谷間が見えそうで落ち着かない。今さら寝室に着替えに行っても  廊下で彼と鉢合わせする。
 ああ、もういいや。この格好で。
 ソファから立ち上がって玄関へ向かうと、靴を脱いでいる絢斗と目が合った。
 目は虚ろで、頬が少し赤い。
「お帰りなさい。お酒を飲んできたの?」
「ああ。今日は杉本の命日だったんだ」
 今日は……十二月二十日。
 杉本というのは、絢斗の高校時代の親友。
 いつも一緒にいてとても仲がよかったのだが、杉本くんは九年前に白血病で亡くなった。
 そう言えば、今の時期にお葬式に行った記憶がある。
 
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