恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 俺がそう言って慰めると、彼女は涙を手で拭いながら悲しげに笑った。
「そうできたらいいんだけど。彼がいないと寂しくて……」
「気持ちはわかるよ。でも、そんな峯岸を見たら、杉本が悲しむぞ」
 俺が優しく注意すると、彼女は胸元のネックレスに手をやりながら返す。
「そうね。涼太にはずっと笑っていてほしい」
 彼女がつけているネックレスは杉本が彼女にプレゼントしたものだ。
 峯岸が彼の死を乗り越えるにはもう少し時間がかかるかもしれない。
 食事が運ばれてきて互いの近況について話をしながら料理を口にする。
 彼女は笑ってはいたがあまり食欲がなかったのか、少し残した。
「食事も喉を通らないのか?」
 気になって尋ねると、彼女は笑顔を作って言った。
「涼太の命日の前後だけ。普段はちゃんと食べてるから心配しないで」
 本当に普段食べているのか怪しいが、強く食べるように言っても無駄だろう。
 何度か話して見てわかったが、彼女は結構頑ななところがあるから。

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