恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 愛するふたりにこんなにも大事にしてもらってる。
「絢斗も歩もありがとう」
 涙を拭いながら笑うと、絢斗と歩も微笑んだ。
 それからタクシーを拾って広尾にある絢斗の実家へ向かう。

 着いたのは夕方六時で、空はすっかり暗くなっていた。
 彼の実家は閑静な住宅街にあって、石造りのスパニッシュ様式の三階建ての洋館。
 二メートル以上ありそうな高い壁に覆われ、鉄製の大きな門はどこかのヨーロッパの邸宅のよう。
 敷地は歩が通っていた保育園の二倍はありそうだ。
 絢斗の話によれば一条家は旧華族の家柄で、このお屋敷は昭和初期に建てられたものらしい。
「すごい。お城みたい」
 歩が驚きの声をあげれば、私も「うん。なんだか外国にいるみたいだね」と弟と顔を見合わせた。
 改めて絢斗が御曹司だと思い知る。
「古いから住むには結構不便なんだ。だから祖父は老人ホームに入ってるし」
 絢斗の説明に納得する。
「これだけ歴史ある建物だと簡単にバリアフリーはできないよね」
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