恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
来てくれと言っているが、命令にしか聞こえない。
 ここでごねたら悪目立ちする。ただでさえ、周囲にいる社員が私と菊池さんの方をちらちら見ている。普段副社長秘書がうちの部署にくることなんてないからだ。
「わかりました」
 小声で返事をしすると、木村くんと咲が不安げに私を見ているので、笑顔を作った。
「大丈夫。私が呼ばれるなんてなにかの間違いだよ」
 バッグを持つと、菊池さんについていく。
「絢斗とは昔からの知り合いなのか?」
 一条くんとの関係を聞かれ、平静を装いながら答えた。
「高校のクラスメイトでした。でも、それだけです。高校卒業後は会ってませんでしたし」
 なるべく親しくない関係だとアピールする。一条くんと一緒のベッドにいたなんて失態を知られたくない。
「だが、昨日会っただろ?」
 ニヤリとする菊池さんを見てゾクッとする。
「し、知ってるんですか?」
 恐る恐る尋ねると、彼は知ってて当然と言った顔で返した。
「そりゃあ、まああいつの秘書だから」
 彼の返答を聞いて怖くなった。
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