恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
恋人でもないのに俺にベタベタ触ってきて、それとなく距離を取るが鈍感なのか俺に話しかけてくる。
 その宝生さんが俺に気づき、席から立ち上がった。
『絢斗さん、待ってました……!』
 彼女は俺に連れがいて不愉快そうに顔を歪める。
 いい反応。それにしても下の名前で呼ぶことを許可した覚えはないんだがな。
 ホント、図々しい女。
『そ、その女は誰なんです!』
 激しく狼狽えながらも、彼女は美鈴を憎悪に満ちた目で睨みつける。
 お陰で美鈴が怯えているんだが……。
 つくづく宝生という女は醜い。
 とりあえず、この見合いを早く終わらせよう。
 美鈴を安心させるように強く彼女の手をギュッと握り、宝生さんに告げた。
『彼女は私の恋人です。宝生さんには申し訳ありませんが、あなたとは結婚できません。彼女……美鈴を愛しているので』
 美鈴を愛おしげに見つめ、敢えて綾乃と呼ばず本名で呼ぶ。
 さあ、彼女はどういう反応をするだろうか?
 宝生の反応よりも美鈴の反応が気になった。
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