恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「でも……」
 彼女が周囲を気にしながら躊躇うので強い口調で言った。
「早く行かないと保育園が閉まるんだろ?」
 その言葉で美鈴は素直に従い、俺と一緒に後部座席に乗る。
 助手席に座った拓真はスマホを操作してなにやら仕事をしていた。
「保育園の場所はどこ?」と美鈴に尋ねると、彼女は「阿佐ヶ谷。でも、もうきっと間に合わない。七時半までなの」と焦りを見せる。
 そんな美鈴を安心させたくて、彼女の肩をポンと叩いた。
「高速を使えば間に合うと思うが、美鈴も念のため保育園に電話して」
「う、うん」と返事をし、彼女はすぐに保育園に電話をかける。
 車が走り出しても、彼女は気が気じゃないのかじっと腕時計を見ている。
「歩というのは美鈴の子供?」
 結婚指輪はしていないが、俺たちの年齢なら子供がいてもおかしくない。
 子供のためにレンタル彼女をしているのだろうか。
「違う。私の弟なの。取り乱してごめんなさい。いつもお迎えギリギリで、時間に遅れちゃうと保育士さんにも申し訳なくて……」
 
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