恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 美鈴がクスッと笑うので俺が「変だった?」と聞いたら、歩くんが答えた。
「ううん。名刺初めてもらった。嬉しい。お兄さん、ありがとう」
 小さく笑う顔が美鈴にそっくり。
 それだけで、かわいい子だと思えた。
「社長になるってすごいね。車に運転手さんもいる」
 美鈴が俺が送ることにうんと言わないので、ちょっと興奮した様子の歩くんを口説いた。
「すごくはないけど、せっかくだから車で送って行くよ」
 それで歩くんが「うん」と嬉しそうに返事をして車で送っていくことが決定したが、美鈴は苦笑いする。
 なにか気に入らないことがあるのだろうか。
「この車の椅子、座り心地いいね」
 歩くんが目を輝かせ、俺が「気に入ってくれてよかった」とフッと笑って返すが、美鈴はひとり落ち着かない様子。
俺にあまり関わってほしくないのだろうか。
 なにか変だと思ったが、彼女たちが住んでいるアパートを見て納得した。
 人が住んでるのが不思議なくらい粗末な木造アパート。
「本当にここに住んでるのか?」
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