恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 歩に釘を刺したら、弟は私に布団をかけて頭まで撫でてくれた。
「わかってる。美鈴は寝てて」
 なにかスマホで調べるのだろうか。弟は文字も自由に打てて、ネットでよく調べ物をするのだ。
 少し気になったけれど、もう今はとにかく身体を休めたい。
 少しうとうとしていたら、ドアを激しくドンドンと叩く音がして、目を開けた。
 ……あの男がきた。こんな時に限ってタイミングが悪い。
 ダルい身体に鞭打ってゆっくり起き上がり、歩の両肩を掴んで言い聞かせる。
「いい歩、押し入れに隠れてて」
 ズキズキする頭を押さえ、押入れの横にある引き出しから茶封筒を出して玄関に向かう。
「早く、出ろよ。金返せ!」
 ドスの効いた声を聞いて、身体がビクッと震えた。
 怖がるな。歩もいるんだから。
 勇気を奮い立たせ、玄関のドアを少し開けると、男がそのドアを勢いよく開いて全開にした。
「待たせるな。さあ、金寄越せ」
 
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