恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「ど、どんなって聞かれても……」
 目を逸して口籠る私の顎を一条くんがクイと掴む。
「なにもない方が美鈴は安心なんだろうけどね」
 彼に私の心の中を見透かされている。
「だ、だって……副社長となにかあったら大変じゃないですか」
 私はただのOL。しかも小さい弟だって育てているのに、周囲に騒がれるような関係は嫌だ。
 それに、今の私には誰かと恋愛する余裕なんてない。弟と生活していくので精一杯だもの。
「副社長である前に、美鈴の同級生だし、それに俺はただの男だよ」
 副社長の肩書き取ったって彼はただの男なんかじゃない。
「それで、結局なにかあったんですか?」
「残念ながら抱いてはいないけど、水が欲しいって美鈴が何度も言ったから口移しで飲ませて、添い寝しただけ」
 一条くんがフッと微笑して答えるが、その返答を聞いて絶句した。
「抱いてないけど口移し……」
 キスもしたことないのに口移しって……。
「忘れてるなら思い出させてあげるよ」
 
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