断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

 お忙しいジャックさまとは、当たり前のように、会えない日々を過ごす。
 午前中は護身術の訓練を毎日行い、その後は、愛猫のルナと遊んだり、刺繍や読書、勉強をする生活が続いた。

 そんな中、わたくしの唯一の友人が屋敷を訪ねてきた。同じ公爵令嬢のシャルロッテ・ハイデンライヒだ。
 親同士が仲良く、幼い頃から一緒に遊んで育った彼女は、幼馴染のようなもの。

「シャルロッテ、ようこそ我が屋敷へ」
「ごきげんよう、ヴィクトリア。久しぶりね」

 しばらくぶりに会った彼女は相変わらず、艶やかなストロベリーブロンドで、綺麗な笑みを浮かべている。
 しかし周りをきょろきょろと見た後に、表情を曇らす。

「……随分と物々しいわね」
「ええ。近衛兵が守ってくれているのよ」

 そう。正式にジャックさまの婚約者になったので、数日前から、近衛兵の護衛がついている。
 それもジャックさまが手配してくださったということで、感動したところだった。

 シャルロッテとは親しい仲なので、私室にお茶の支度をして貰ってから、二人きりになった。
 扉の前とバルコニーを近衛兵が守ってくれている安心仕様だ。

「ヴィクトリア、心配しましたのよ。あの日、イーサン……元第二皇子殿下から、あの様な仕打ちを受けているところを見て、すぐ助けようとしたけど、ジャック皇太子殿下に止められたの。それに妙な噂まで出ているじゃない! お茶会に出ては否定して回ってるのよ」
「そうだったのね。もうすぐ嫁ぐ立場で忙しいだろうに、噂の火消しまでさせてしまって申し訳ないわ……」
「それは貴女もでしょう。ジャック皇太子殿下と結ばれるだなんて本当にびっくりしたわ!」

 思わず、苦笑いしてしまう。ええ、わたくしもジャックさまと婚約を結ぶことになるだなんて、吃驚しています……。


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