処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
それにしてもここはなんなのだろう。
天国にしてはおかしい。地獄なのかな?

ヘッドライトの光に包まれ眩しくて何も見えなくなったあと、強い衝撃とともに今度は真っ黒な宇宙に放り投げられたようになった。
その後、どれほどの時間が経ったのかわからないが、はっと気がついたらここに居たのだ。


「カウル。姫の奴、なんか様子がおかしくねぇ?」


右目を眼帯で隠し、さらにそれを長めの前髪で覆っている男が隣の一番偉そうな男にヒソヒソと耳打ちをした。真っ青な髪だ。あれは地毛なのだろうか。とても背が高く細い人だった。のっぽさんだ。


「とうとう逃げられないとわかって気でも狂ったんじゃないの?」


偉そうな人を中心に、さらにその反対側に立つ男の子が、大きな猫目で睨んできた。ふわふわの赤髪はミュージカルでよくみかける赤毛の女の子、アニーのようだ。口元をフェイスマスクで覆い人相がよくわからない。背も低めだし一瞬女の子かな?と思ったけれど、声がちゃんと男だった。

その真ん中に立つ逞しい男、カウルは腕を組み鋭い三白眼の目でずっとわたしを睨んでいた。格闘家のように腕も首も太い。襟が花柄の、派手な着物のような服をゆるく着ている為、鍛えられた胸板と六つに割れた腹筋が見えた。とても強そうだ。


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