お嬢様は完璧執事と恋したい

 するとそれを聞いていた傍の男性が、苛立ったように身体を揺らして声を張り上げた。

「おい、もっとスピード出ねぇのか!?」
「うるせーな、これが限界だよ! これ以上速めると捕まるだろ!」

 二人の男性の言い合いを聞きながら、まだ混乱する頭を必死に動かしてどうにかこの状況を切り抜ける方法を模索する。

 そして話し合う男性たちや車内の様子、窓の向こうの景色をきょろきょろと見回した澪は意外な事実に気がついた。

(え? 目隠ししなかったらどこに行くのか丸わかりじゃない……?)

 口を塞げば声は出にくいし、手足を縛られれば暴れてもそれほど抵抗にならず体力を消耗するだけだろう。けれどなぜか、目隠しはされていない。

(えっと……普通スマートフォンもってないかどうかぐらい、確認しない?)

 過去にも数回誘拐された経験があるからか、冷静になるのは早かった。そのついでに相手の行動の杜撰さまで分析してしまう。
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