へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜


 この部隊で自分も大きく成長して、誰かの足でまといにならずに皆の力になりたいと、心から強い願いが湧き出てくる。

 誰よりも部下達を信頼し、皆を守り抜くリヒトの傍で己を磨いていきたいと。それが憧れなのか、はたまた違う感情なのかは、今のミアにはよく分からない。

 固い絆で結ばれた彼らの背中は逞しく、胸が踊る。
 


「今日も見事だった。さて……帰るか」



 リヒトの言葉に、騎士達は嬉しそうに小さくはにかんだ。普段彼に対して恐怖を抱く彼らでも、その言葉は士気の高揚をもたらす。

 帰る支度を整え始めた騎士達に背を向けて、彼はミアの元へと足を運ぶと、仁王立ちしたまま睨みつけてくる。

 先程までの熱い気持ちは一気に降下して、表情は固くなっていく。



「……」



 無言の圧力を掛けられ、フェンリルに抱きついていた腕を解いて姿勢を正す。

 足でまといになったことにお叱りを受ける、その覚悟をしていたが……ひょい、と、またしても体が勝手に宙に浮く。



「えっ?えっ?!」


「お荷物はお荷物らしく、俺に抱き上げられてろ」



 お荷物という言葉に、これが彼なりの見せしめなんだと、両手で顔を覆う。そんな二人の姿に、ユネスは素直じゃないんだから……と小さく呟いたのを、ミアは気づくこともなかった。

 こうして、初めての戦場は見事勝利を収め、魔獣達に大きな一歩を踏み出す場になったのだった。







< 101 / 202 >

この作品をシェア

pagetop