へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
だが、耳から首に彼の唇が移動して噛み殺しきれなかった小さな声が漏れると、リヒトは軽く歯を立ててきた。
獲物を狩る獣のように力強いのに、口付けは大事な何かを壊さぬように丁寧で優しい。
全身が痺れるような感覚に呼吸すらままならなくなってきて、力を振り絞るようにしてリヒトの肩に手を添えた。
「もう……止めてくださいっ……」
「それはただのお願いか?命令でないと俺は従わない」
頑としてミアの言葉に耳を傾けようとしないリヒトに、為す術はない。ましてや、命令など下せるわけもない。
だからと言ってこれ以上体が言うことを聞かなくなって、残っている仕事を放棄するつもりもなかった。
「お願いじゃダメ、なんですか……?」
「ああ。駄目だ」
「団長の役に立てるよう……私、頑張るから……お願い……もうっ、止めてください……!」
「……っ」
顔を上げて、リヒトはミアが虫の息になっていることにようやく気づく。最後に一度だけ軽く首にキスを落としたかと思えば、何事も無かったかのように前髪を掻き乱しながら起き上がった。
「頑張るも何も……お前はこれだけ十分に頑張っているだろうが……」
風に流されてよく聞こえなかった、リヒトの呟きを聞き返す余裕もなく、呼吸をようやく整えて起き上がる。