エレベーターから始まる恋
ビルに戻った私の両手には大量のサンドイッチやクロワッサン。
ついでにおやつ用にスコーンも買ってしまった。
絶対一人で食べ切れるわけないのに、むしゃくしゃして買ってしまった。
エレベーターに向かおうとすると、自販機のボタンをアルコール消毒している鈴木さんの姿が目に入る。
「鈴木さん!」
「あら雅ちゃん。お昼戻ってきたの?」
「今買ってきて。席で食べようと思って」
すると鈴木さんの目線は私の手元に落ちた。
「それ、全部??」
苦笑いで両手の袋を胸元あたりまで掲げる。
「えへへ、ちょっと…。あ!そうだ!鈴木さんはお昼休憩これからですか?」
「えぇ、このフロア終えたらね」
そう言われて、私はその場で袋の中身を色々と移し替える。
その様子を不思議そうに見ている鈴木さんに、袋一つ差し出した。
「これ、よかったら食べてください。ちょっと買いすぎちゃったので」
「え?雅ちゃん食べたくて買ったんじゃないの?」
鈴木さんは遠慮がちに両手を振る。
その手に半ば強引に袋を持たせた。
「いいんです!いつもお世話になってるし、貰ってください!」
「そ、そう?」
「はい!それじゃあ私戻りますね。午後も頑張ってください!」
その場を立ち去り、エレベーターに乗って4階に向かった。