エレベーターから始まる恋
午後は無心になって仕事をした。
もはや石岡さんの罵声も脳みそで処理せず、BGMとして聞き流す。
なんだ、最初からこうしていればよかったじゃん。

二年経ってようやく身につけた石岡さん回避法。
グンジさんに恋をしたのは、もしかしてこの方法を習得するためだったのかもしれない。

「坂本さん、顔が強張っているけど大丈夫?」

相変わらず優しく気にかけてくれる大橋さん。
大橋さんが独身だったら絶対に恋していた。

「すみません、集中しすぎていただけです!大丈夫です!」

再び画面と向き直り、無心になってキーボードを叩く。


定時のチャイムが鳴り、各々そそくさと退散する。
石岡さんは鬼ではあるけれど、残業まで強制しない。
不幸中の幸い、と言ったところだろうか。

私もゆっくり帰り支度を済ませて席を立つ。
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