エレベーターから始まる恋
ミーティングが終わり、次回の日程を大まかに決めている中、会議室の扉がゆっくりと僅かに開いて同じ営業事務の岡野さんが顔を覗かせた。

「坂本さん、ちょっとだけこっち手伝って欲しいんだけど大丈夫?」

その言葉に石岡さんに視線を移すと、目で"さっさと行け"と言われているような気がして静かに立ち上がり、会議室を出た。

「ごめんね、まだ議事録途中だった?」

「いえ、あとはまとめるだけなので大丈夫です」

岡野さんに頼まれ、割り込みで入った急ぎの注文書の処理を手伝う。
少ししてから会議室の扉が開く音と、先程のメンバーのざわざわとした話し声が耳に入った。


「また、よろしくお願いいたします」

笑顔で頭を下げる郡司さん。
石岡さんの顔が少し引き攣っているのが気になる。
あの人のあんな顔、見たことがない。

注文書の処理を終えたところで自席に戻る石岡さんの元へ歩み寄った。

「先程は途中で失礼しました。今日中には議事録仕上げてアップしておきます」

「あ、あぁ…頼む」

…やっぱりおかしい。
私にまで引き攣った笑顔を見せた。

不思議に思いながら、議事録のまとめに取り掛かった。
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