エレベーターから始まる恋
あれ以来、石岡さんの様子がどうもおかしい。
毎日のように浴びせられる罵声もここ最近ぱったりとなくなった。
普段なら、仕事でミスしようものなら誰彼構わず怒鳴りつけるのに…
「す、すみません。先日提出した部品リストに一部記載漏れがございまして…」
先輩が真っ青な顔で恐る恐る石岡さんに話しかけ、怒られる覚悟も伺えるのだが…
「そうか。期日間に合うから早めに修正して再提出してくれ」
「は…はいっ」
先輩もあっけに取られている様子。
異様な光景に周りでもひそひそと声が立つ。
「石岡さん、最近どうしたんでしょうね」
向かいの大橋さんに小声で問うも、困ったように眉を潜め首を傾げるだけだった。
石岡さん、すっかり大人しくなってしまった。
まぁこちらとしては働きやすいのだが…
どうも気になって仕方がない。
様子を伺いながら、そつなく業務をこなしていくのであった。