エレベーターから始まる恋
「前も話したと思うけど、ずっと気になってたんだ、君のこと。好きなんだよ」

「っ!!」

真っ直ぐ目を見て、静かに、だけど力強くそう言った。

「俺、結構小心者なんだ。年齢のことばかり気にしてしまう。こんなおじさんに言い寄られても引かれるんじゃないかと怖くてなかなか前に進めない。俺は君が好きだ。でも君の答えを聞くのが怖い」

先程までしっかりと私の目を捉えていたが、徐々に力強さが抜け目線が下に落ちていく。

そうか。私がちゃんと言葉で伝えていなかったからだ。
私だって、郡司さんのこと…

「私は、エレベーターで郡司さんに会えるのが嬉しかったんです。仕事は色々大変だけど、郡司さんに会えるかな?っていうドキドキがあったおかげで仕事続けて来れたんです。仕事とは違う場所で楽しみを見つけることができたから頑張ってこれたんです。つまり…」

郡司さんはじっと私を見つめていた。
数秒視線を交わらせ、恥ずかしさですぐに逸らしてしまう。

「聞かせて。君の気持ち」

エレベーターで聞き惚れた、あの低音ボイス。
緊張で固く結ばれた口元の力がすっと抜けた。

「…好きです、郡司さん。半年前から好きでした」

やっと伝えることができた、私の気持ち。
その言葉を耳にした郡司さんは、柔らかい笑みを浮かべた。

「坂本 雅さん。俺と付き合ってください」

「…はい。よろしくお願いします」

幸せな気持ちで食べる定食は、お値段の倍以上の美味しさを感じる。
先程と同じ沈黙なのに、空気がとても心地よかった。
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