エレベーターから始まる恋
お昼休みになり、ぞろぞろと人が動き出す。
周りと同じタイミングで出たらどこもかしこも混むから、お昼をあまり食べない私は少し時間を置いて軽食を買ってきて座席で食べるようにしている。

ぐっと伸びをして、今日は何を食べようかと考えていると、ふとあることを思いついた。

そういえば、いつもあの人が降りている3階にはコンビニも併設されていたはず。
なるべく会社を出て外の空気を吸いたいから、いつも外で一番近いコンビニに入ったりカフェでサンドイッチをテイクアウトする毎日だけど、今日は3階のコンビニに行ってみよう。

会えるかもわからないのに僅かな望みで行動を試みた。

エレベーターに乗って3階に降りると、案の定人で溢れかえっていた。
こんなんじゃ会えるどころか見かけることもないかも…
だけど、今からまたエレベーターで下に降りて外に出るのは面倒だ。

時間をかけてコンビニにたどり着くと、入り口の前で思わず足がすくんだ。

腰をかがめて下段のお弁当類を眺めている彼の姿があった。
もちろん声を掛けることはできない。
彼にとってはただエレベーターで乗り合わせるだけの人。
もはやそれすらも印象に残っていないかもしれないのだから。
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