貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
どうしてこうも私の兄達はこんなにも私を甘やかすのか……。唯一の女の子だからなんだろうか?と思いながら、私はニコニコ私を見ている兄達の顔を見上げていた。


「はい。与織ちゃん、できたよ~」

そう言ってみー君は肩にかけたケープ代わりのタオルを外す。

「わぁ!可愛い!ありがとう、みー君。また腕上げた?」

自分の部屋に置いてくれてあったドレッサーの前で、サイドを確認するように首を振りながら私は言う。
みー君は私の平凡なボブヘアの両サイドを編み込んでヘアアレンジしてくれたのだ。

「与織ちゃんに喜んで貰いたくて練習したんだよね」

そう言ってふんわりと笑みを見せるその顔はお母さん似だ。髪の毛はどちらかと言えばブラウン系で細くてふわっとしている。
兄弟の中でお母さん似なのはふう君とみー君といっくん。私といっちゃん、りっちゃんはお父さん似の黒髪で硬め。
それでもいっちゃんとりっちゃんは、切長の目に整った他のパーツも相まってザ日本男児って感じの涼しげな雰囲気。けど私はと言うと、一歩間違うと市松人形にしか見えないのが残念だ。

でも、今はなんとか見られる格好のはずだ。
着ているのはいっちゃんにプレゼントされたばかりのコーラルピンクのワンピース。そしてみー君がくれたメイクパレットでお化粧をして、靴はふう君からのベージュのストラップ付きのパンプス。
兄達のおかげで、きっとこの、スーツでばっちり決めた、眩いほど輝く3人と一緒にいても浮かないはずだ。

たぶん……
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