貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
婚約者同士の甘い会話の一つもなく、私は車を降りる。そんなもの、偽物の婚約者には必要ないんだから。

走り去る車を見送り、みー君と家へ帰る。

「与織ちゃん。浮かない顔してなんかあった? ふう兄から与織ちゃんをよろしくって連絡あったけど」
「ううん? 疲れただけ。ふう君、他に何か言ってた?」

マンションのエントランスに入り、エレベーターを待ちながら私は尋ねる。

「今日は実家泊まるって。いち兄も遠出してて帰って来ないし、今日は僕が与織ちゃん独り占めだ」

みー君は、そう言って嬉しそうにフンワリとした癒し系の笑顔を見せた。

「私も今日はみー君に癒やしてもらお!」
「僕でよければいくらでも」

私がみー君の腕にしがみつくと、みー君は私の頭をポンポンと撫でた。その感触に、私は違和感を覚えた。
いや、正確には、さっき目が覚める直前に私の頭を撫でていたその感触に。

あれって……みー君、なんだよね?

優しく、でもなんだか……戸惑っているような。そんな感触に思えた。

まさか……ね?

主任が私の頭を撫でる理由なんてないんだから、そんなはずないと打ち消すように、私は小さく頭を振っていた。
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