貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「与織姉~!」

応援に来ている保護者や学生達の間をすり抜けるように、いっくんが手を降りながら走ってくると、私に抱きついた。

「苦しいって!」

いっくんの腕の中でもがきながらそう言うと、いっくんは「ごめんごめん」なんて屈託のない笑顔を見せた。

視線が……痛いんですが……

全国大会に行くような強豪校のレギュラー選手となると、それなりに有名人だ。周りの女子高生からヒソヒソと「朝木君だ。あれ誰?」と言う声が聞こえてくる。

「もう! いっくん? いい加減姉離れしてよね!」

姉を強調しつつそう言うと、いっくんは目に見えてしゅんとしながら「だってさ、兄ちゃん達来れないって言うからさ。与織姉に会えたのが嬉しくて」と可愛いことを口にした。
私だって、この体は大きい弟が可愛くないわけはないのだ。

「で、今日はどうやって来たの? 電車?」

私の身体を離して見下ろしながら、いっくんは私に尋ねる。

「あ、えと。それは……」

口籠もっていると、不意にいっくんは顔を上げた。

「あれ? えーと、兄ちゃんの友達? 誰だっけ……」

驚いたように私の向こう側を見てそう言ういっくんに、私の頭上から「川村だ。久しぶりだな、逸希(いつき)」と声が降って来た。
< 130 / 241 >

この作品をシェア

pagetop