貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私はなんでそんなわがままを言っていたのだろう? 困惑した表情でその人は私を見下ろし、宥めるように頭をそっと撫でてくれた。

『じゃあ、与織子と――したら、一緒にいられる?』

私はその時、子どもながらに知恵を絞って言ったはずだ。幼い私は、それがどんなことなのか知らなかったはずなのに。

戸惑った表情でその人は私を見下ろしたまま、『……そうだね』とだけ言った。

『約束だよ? 今度ひまわりの種、用意しておくから!』

その人の名前を呼ぶ声が大きくなっている。その声を聞きながら、『わかった。約束だ』とその人は薄らと微笑んだ。

そして、そのあと聞こえてきたその人の名前は……。

『……そういち! ここにいたのね?』


パチッと音がしたような感覚で私は目を開けた。

「えっ……?」

なんだったんだ、今のは。あまりにも主任のことを考えていたからだろうか。

私は夢の中で、誰かと会話していた。幼い頃の私と、兄じゃない誰か。

ゆ……め……?

まさか、ね? そんなこと、あるわけないじゃない、と私は思い直す。遠い昔、主任に会ったことあったなんて、そんなことあるはずないのに。

私はそんなことを思いながらノロノロと体を起こした。その時、部屋の扉がノックされる音が耳に入ってきた。
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