貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
そう言って創ちゃんが指を刺したのは、光溢れるステージの方向。一気に緊張が走るが、意を決して頷いた。そして、私を促すように視線を送る創ちゃんのあとに続いた。
ステージでは、社長のスピーチが続いている。私たちは、その横顔を舞台の袖から見守った。

「────。グループ内にこのような事件が起こってしまったこと、誠に残念でなりません。ですがこれを乗り越え、私はよりいっそう、和を大切に、皆様とよき仲間、よき理解者であり続けたいと、そう願っております」

そう社長が言うと、盛大な拍手が沸き起こっていた。

「……そうだ」

思い出したように、創ちゃんは私の耳元に顔を寄せる。

「とりあえず、今から驚くことがあっても、あまり舞台の上で驚いた顔するなよ? 与織子はすぐ顔に出るからな」

創ちゃんは少し笑いながらそう言って、ついでとばかりに私の頰にキスをした。

「ひゃっ! そっ、創ちゃん⁈ こんなところで!」

私が首をすくめながら返していると、創ちゃんに余計笑われる。
そして、向こう側から視線を感じるなぁと前を向くと、こちらを見て微笑んでいる社長と目が合った。
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