貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
鶴さんは、うちに来てくれているハウスキーパーさんだ。毎週金曜日の昼間、主に料理を作り置きしてくれているのだが、まだ一度も会ったことはない。と言うか、「姿を見てはいけない」といっちゃんに言われているのだ。

「へ?なんで?こんな美味しいご飯作る人、会ってみたいよ!」

それを聞いたとき、私は思わずいっちゃんにそう言ったのだけど、「姿を見たら、二度と来てくれなくなる」と返ってきて、私はこう言ったのだ。

「鶴の恩返し?」
「ま、そんなところだな」

目を丸くしている私に、いっちゃんは笑いながらそう答えた。だから私は勝手に『鶴さん』と呼び始めたのだった。ちなみに、鶴さんの正体はいっちゃんしか知らず、ふう君やみー君とどんな人なのか想像していると、いっちゃんはそれを聞いて含み笑いをしていた。

鶴さん!今日も美味しかった!ごちそうさまでした!

私は心の中でお礼を言ってから手を合わせた。なんとなく、白髪交じりで割烹着の似合うおばあちゃんを想像しながら。

使った食器を洗って、ちょっと休憩とリビングのテレビを付ける。なんとなく眺めていると、芸能人が美味しい店を紹介する番組をしていた。
今まで都内が紹介されても指を咥えて見てるだけだったけど、これからは違う。その気になればいつでも行けるのだ。

目の前の画面には有名ホテルの庭の美しいラウンジが映る。

うわぁ……。美味しそう!

さっき食べたばかりでお腹いっぱいなのに、私は画面の中のアフタヌーンティーセットに釘付けになっていた。
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