貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
社会人にもなって門限なんて笑われるかな?

そう思いながらおずおずと答えると、主任は腕時計を確認していた。

「俺もそれくらいで切り上げる。一緒に店を出してやるから安心しろ」

まるで仕事の業務連絡みたいに、主任は淡々とした口調で私に言う。

「ありがとうございます。主任、優しいですね!」

きっと、二次会の途中で帰るなんて、私には言い出しづらいと思ってそう言ってくれたんだろうなって、私は都合よく受け取った。

仕事中だってそうだ。清田さんが帰って、途端に私がどうしていいのか分からなくて困っていると、隣からさりげなく、『マニュアルの30ページ見ろ』なんて声がしてくる。自分は画面を見て手を動かしながらで、最初は怒ってるのかと思った。
 でも、1週間経って今は違うんだなって思える。

「別に……俺も早く帰りたいから"ついで"だ」

そう言って顔を背ける主任は、なんとなく照れてるんだろうなって思う。
 そしてその顔を見て私は、ちょっと可愛いかも……と思えるくらいにはなっていた。
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