貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
お父さんも書斎から出てきて、いつもより一人多い食卓で皆が一斉に手を合わせる。

「いただきます」

家にいる時はみんなでご飯を食べるのが朝木家のルール。いっちゃんがまだ家にいたころは8人で囲んでいた食卓も、1人減り、2人減り……。私がいなくなると4人になってしまうと思うと少し寂しくなる。

「うん。美味い!うちの山で採れた山菜最高!」

いっちゃんが上機嫌で、何の変哲もないいつもの天ぷらを平らげているのを横目に、私は一人しんみりしてしまう。

「あら。どうしたの?与織子ちゃん。お箸止まってるわよ?」

向かいからお母さんがそう言うと、他のみんなも箸を止めて私を一斉に見た。

「あ……。とうとうこの家も半分になっちゃうんだなぁって……」

そう思うとなんだか込み上げてくるものがある。出て行くのは私のほうなのに。

「よっ、与織ちゃん?いいんだぞ? ずっと家にいてくれても」

向かい側から慌てたようにお父さんが言う。

「それはやだ。都会に住みたい」

涙を浮かべながらもきっぱりと言うと、お父さんは見るからにしゅんとしていた。

「大丈夫だって与織姉!来年には俺達もそっち行くし、1年経ったら兄弟みんなで住める!」

いっくんは私を元気付けようと明るく声を上げた。天ぷらを口に放り込むのは忘れずに。
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