貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

「そうだよ、与織姉。僕は来年Ｔ大に入るつもりだから、その時は色々案内してよ」

りっちゃんはそう言って優しく微笑みかけてくれた。

「りっちゃんなら間違いないよね。うん。楽しみにしとくから」

可愛い弟達に励まされ元気が出る。

「そうだぞ？与織子。颯太(ふうた)も実樹(みき)も一緒に暮らせるのを楽しみにしてるんだからな？」

斜め隣からいっちゃんが、ここにいない２人の兄の名前を出して和かにそう言う。
私だって大好きな兄達と久しぶりに一緒にいられるのは楽しみだ。ふう君もみー君も、私をどこに連れて行こうかと画策してくれているらしいし。

「うん。そうだね」

私がようやく笑顔で答えると、いっちゃんも笑顔になった。和やかな雰囲気にやっと戻ったと思っていたら、ただ一人お父さんだけは違っていた。

「与織ちゃん！お父さんは寂しいぞ～！」

涙ながらにそう言うお父さんを見て、正直引きながら、「えと。すぐまた帰省するし！ね。それにお父さんにはお母さんがいるんだから寂しくないでしょ！」と口にする。

「そうよ、お父さん。それとも、私じゃ物足りないのかしら？」

お父さんの横でニコニコしながらお母さんは言っているが、たぶんこれは……ちょっと、いやかなり呆れてるんだろうなぁ……とその顔を見て思った。