貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
いっちゃんが最後の一つの段ボールを運んでくれて、それを車に積み込むと「忘れ物はないか?」と尋ねられる。

「大丈夫だと思うよ」

いっちゃんにそう答えると、後ろを振り返った。車の側には見送りに出てきてくれた家族の顔がある。

「じゃあ、行ってきます!ゴールデンウィークには帰って来られると思うし、きっとあっという間だね」

今日は3月の下旬に差し掛かったところで、休みがカレンダー通りだとしても、5月の頭には連休がある。1ヵ月半なんて、きっとすぐだ。

「俺達がそっち遊びに行くって言うのもいいよな!兄ちゃん、いい?」
「そりゃいいけど、大丈夫か?受験生」
「僕は大丈夫だけど、逸希はどうかな?」
「煩いなぁ!俺だって行ける大学くらいありますぅ!」

私は兄と弟が微笑ましく戯れ合う姿をクスクス笑いながら眺める。

「ほんと、可愛いなぁ!」

私がそう言うと、3人とも一斉にこちらを向いた。

「与織子」「「与織姉」」

3人はそれぞれそう言うと、私を取り囲む。

「可愛いのはお前だぞ?」

真顔で私を見下ろしながらいっちゃんがそう言うと、その脇を固めるように立つ双子達も「うんうん」と頷いた。

「ちょっと‼︎なんでそうなるの?いったい何のフィルターかかってるのよ⁈」

私が叫ぶように言うと、3人ともポカンと私を眺めていた。
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