ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
光の巫女

勝利、そして……


 私たちは5日ほどグロムス砦に滞在して、森に逃げ込んだ敵兵の掃討と、ロズモンド軍の撤退を確認してから、王都への帰路についた。

「大勝利ですな」

 馬上で銀髪を揺らしながら、ベルナルドが言った。ミーリアの軍列の中程には、捕虜になったロズモンドの兵たちが大人しく付いて来ている。
 敵兵が戦意を失ったとき、ベルナルドが私に駆け寄ってこう言ったのだ。

「すぐに戦闘停止の指示を。武器を置いた相手を傷付けてはなりません、それではミーリアもロズモンドの同類と諸王国に思われてしまいます」

 勝利が決まった瞬間、私も頭が真っ白になりかけたけど、ベルナルドの助言で為すべきことを思い出した。
 もとより、私もお父さまも、無駄な流血を望んではいない。

 兵士たちの勝鬨(かちどき)の声を聞きながら、私は高らかに勝利を宣言し、全軍に戦闘停止を指示した。
 ベルナルドのおかげで、私たちの戦いは非の打ち所がない完勝として、諸王国に喧伝された──。
 
 ベルナルドは元々ゲンジと同じく傭兵の扱いで、馬に乗ることを許されていなかったのだけど、今回の活躍で私が騎乗の資格を与えて、私の軍師格として同行してもらうことにした。

 もちろん、ゲンジにも馬に乗ってもらった。
 ゲンジは辞退したのだけど、

「あなたのような優れた剣士を、私の側においておきたいのです」

 私がそう言うと、恐縮して拝礼してくれた。
 今も私の前を守るように、馬を進めていてくれる。

 陽気なベルナルドにくらべてゲンジは口数が少なく、こちらから声をかけないとむっつり口をへの字に曲げたままなのだけど、先ほど視線が合ったら目元がとても穏やかだったから、この剣士は上機嫌なときでもこんな感じなんだろう。
 ゲンジの無愛想を咎めていたレイアも、あの戦いでの彼の活躍を見た後は、何も言わなくなっていた。
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