ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜

狼たち


 ぴたりと揃った三人の挙措に、本当なら答礼しなければならない私は言葉を失ってしまった。
 それはアルブレヒト王子も、ヒサーヌ王子も同じだった。逆にこの二人の方が私より、リヴァイ王子たちの凄さはよく知っているだろうから。

「王女様」とレイアに小声で促されて、私は慌てて口を開いた。

「この度の参集、とても嬉しく思います。名高きお三方の……」

 すると、私の口上が終わらないうちに、明るい笑い声が響いた。 

「無理すんなよ姫さん。聞いてるこっちがハラハラしちまう」

 リヴァイ王子は立ち上がると、精悍な顔を緩めて、私に人懐っこい笑顔を見せた。
 
「お互い堅苦しいのはよそうぜ。あんたみたいな女の子にそんな台詞言わせちまって、逆にこっちが申し訳なくなる」

「リヴァイ、不躾ですよ」

 そう言ってリヴァイ王子をたしなめたのは、ハヴェル卿だった。

「全くあなたという人は……。リアナ王女が驚かれているではありませんか」

「うるせーな、俺は面倒臭いことが嫌いなんだよ」

 リヴァイ王子とハヴェル卿の掛け合いに、私だけでなくレイアも、アルブレヒト王子、ヒサーヌ王子も呆気に取られてしまった。

 すると急にリヴァイ王子が、

「おう、アルブレヒトとヒサーヌ。お前らそろそろ席を外せ。俺たちはリアナ王女に大事な話があるんだ」

 そう言って二人の王子に、天幕の外を親指で示した。

「ぶ、無礼な……!」

 アルブレヒト王子が顔を真っ赤にした。

「いたいけな姫さんを、二人がかりでいじめるのは無礼じゃないのかね」

「い、いじめる……?!」

 ヒサーヌ王子も顔色を変えた。

「無礼が過ぎるぞリヴァイ、私達はリアナ王女にお茶のお誘いを受けて……」

「そんなふうに腑抜けたこと言ってるから、姫さんに引かれるんだよ」

 リヴァイ王子は、アルブレヒト王子とヒサーヌ王子を睨みつけた。

「俺たちが天幕に入って来たとき、可哀想に姫さん、泣き出しそうだったじゃないか。あれが楽しいお茶会の様子だったとは、とても俺には思えないんだがね」
 
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