もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 自然と左右に避けた人の波を抜け、ラベーラを連れたアルドの前にまっすぐ向かう。

 そして、音も立てずに床へ片膝をついた。

「遅刻だぞ、グランツ。今、婚約者殿とお前の話をしていたところだ。先日の事件について、既に知っていたそうでな。心を痛めている」

「これも私の不徳の致すところでございます」

 二人の間には長い時間を共にした独特の空気があった。

 アルドの口もとに笑みが浮かんでいることもあり、人々は改めてグランツにかけられた疑惑が間違いであり、無事に王家との和解が済んだのだと思ったのである。

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