もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
「ラベーラ王女、グランツは俺の最も信頼する騎士だ。聖女の祝福をこいつに与えてやってはくれないか?」

「聖女の祝福……ですか」

 ひざまずいたグランツを見下ろし、ラベーラがつぶやく。

 彼女の視線が無意識に大広間をさまよった。多くの人々が聖女の祝福を期待し、ラベーラに注目している。

 庭園に続く硝子扉のそばには、見事な銀髪を紗(ベール)に隠したシエルが立っていた。招待客に紛れ、いつでも魔法を行使させられるよう集中している。

 ラベーラを見ながら、シエルは懐かしさと悲しさ、切なさと胸の痛みに苦しんでいた。

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