もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
「殿下になんて報告するつもりですかね!」

「俺のほうで対処する。今日は引き上げるぞ」

 グランツが彼らを引き連れて立ち去ると、声も遠ざかっていく。

 やがて人々がいなくなり、立ち尽くしていたシエルはほっと肩の力を抜いた。

 その横に音もなく魔獣が降り立つ。煤の森での生活で生まれた〝彼女〟の子供も、シエルの足もとにころんと転がった。

 まだ薄いピンク色の腹を見せ、『撫でて』と言いたげに彼女を見つめる。

「私、今日からシエルというみたい」

 シエルは魔獣に話しかけ、お腹を見せる真っ黒な毛玉の塊をわしゃわしゃと撫でた。

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