もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 グランツの表情がぱっと明るくなると、恐ろしげな印象が一気にやわらいだ。

(本当にうれしいと思っているんだわ)

 彼のわかりやすい喜び方は、シエルの胸の奥にほわっと温かい気持ちを灯す。他人の願いを叶え、喜ばせることで、彼女は自分の存在意義を確認していたから。

「私にも貴女のことをもっと教えてほしい。これからよろしく頼む」

「はい、よろしくお願いいたします」

 グランツは騎士らしく形式張った礼をすると、シエルに背を向けて部下たちのもとへ戻った。

 一部始終を見ていた騎士たちが盛大に騒ぎ出す。

「団長! 目ぇ覚ましてくださいよ!」

「魔女を討伐するんじゃなかったんですか!?」

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