初恋の味は苦い
「美味しい?」
「美味しいよ、食べる?」
「うん、食べる」

祥慈が私のスプーンを舐めると、今度は祥慈のスプーンで私が食べる。

そういうことをしているうちに、祥慈は私をしっかりと見据えてきた。

「スプーン、邪魔」と笑ったけど、なんとなく意味は分かった。

祥慈の顔が近づく。ほんのりとバニラの匂い。

私はゆっくりと目を閉じた。

「ねえ、りっちゃんさ、俺のこと好きだったりする?」

驚きで、目を開ける。
本当に目の鼻の先、ピントが合わないほど近い距離に祥慈はいる。

咄嗟にブンブンと首を横に振ると、「そっか」と祥慈は笑った。そして顔を近づけ、私の唇を食べるようなキスをする。

私は嘘をついた。

一度ゆっくり顔を離すと、私の腰に手を回してきた。誘導されるように、私は祥慈の腰の上に跨り、そしてまたキスの続きをする。

狭い部屋に音だけが響く。

祥慈のバニラと私のチョコが舌の上で混じり合う。祥慈が舌を入れてきたので、私はアイスのバーを舐めるように包むように吸う。

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