結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 男爵令嬢としてマナーの先生からは、初めての挨拶はカーテシーをするのが正式な方法だと習ってきた。けれど最近は活動写真の中で握手をするシーンがあり、それが流行していると聞いたことがある。男性同士だけの挨拶だと思っていたけれど、もしかしたら男女間でもするものかもしれない。

 ソフィアは戸惑いながらも、そっと手を差し出した。初めて出会う男性と手袋をしない手で触れあうなど、あのお堅い家庭教師(カヴァネス)が聞いたら卒倒するだろう。

 震えるソフィアの白い手を、アルベルトの大きな手が包み込んだ。一回、二回と手を振るのは、以前見た活動写真にも出て来たワンシーンと同じだった。

 思っていたよりも固い手の感触に、女である自分とは違う男性の力強さを感じる。包み込まれるように握られた手はアルベルトの少し高い熱をソフィアに伝えてきた。

「もしかして、握手は初めてだった?」
「えっ、……うん」

 戸惑いが伝わったのか、アルベルトは手を離すと眉を寄せながらソフィアの顔を覗き込むようにして顔を傾けた。

「もしかして……、ソフィアさんはお嬢さま?」
< 10 / 231 >

この作品をシェア

pagetop